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がんサバイバー インタビュー

希少がん「左眼窩浸潤扁平上皮癌」のステージⅣに近いⅢ。左目眼球と頸リンパ管の摘出、抗がん剤治療を経て現在は社会復帰を果たした大川知子さん。突然の病と向き合いながらも自分らしく今を生きる、その姿に迫りました。(WEBオリジナル記事)

診断まで半年…私を救った良い医療との出逢い

ものもらいと見紛う程の小さな“できもの”が始まりでした。しかし、どの眼科を受診しても原因は分からず、目薬を処方されるのみ。がんと分かる頃にはすでに半年が経過し、都内の大学病院で2回の腫瘍摘出手術を行いましたが、これ以上は難しいということでセカンドオピニオンへ(※1)。4院目の静岡がんセンターで、ついに左目眼球とリンパ摘出という大きな決断をすることになりました。実感したのは、患者も勉強して正しい情報を得ることが良い医療に出逢うために必要だということでした。

片目と引き換えに選んだ命。人生は選択の連続

「目を取らないと、あと1年生きられない」と言われたときの衝撃は大きいものでした。40年先だと思っていた死が、急に眼前に突きつけられたのですから。しかし、それと同時に私を突き動かしたのは、親より先に死んで悲しませることはできないという想いでした。生きる方に賭けられるなら、手術を迷う時間も理由も私にはありません。手術の前に「お葬式はどうするか」「死んだら誰に連絡を取るか」といった終活をしたのですが、不思議と気持ちが楽になりました。生きる覚悟も死ぬ覚悟もできて腹が据わったのですね。

二人にひとりが“がん”の時代を生きるということ

片目を失いましたが(※2)、せっかく生きているのだから引き篭もっていては勿体ないです。私は外出のときは「エピテーゼ」という目元をカバーするためのシリコン製の人工ボディパーツを付けています。世の中には、病気を治す方法も、病気になってからの人生をより良くする方法も沢山あるんですよ。

人生は「まさか」という坂ばかり。誰もががんになる時代だからこそ、逃げるのではなく、病気について学んだり検診に行ったり、そういった事の積み重ねが大切になってくるのではないでしょうか。そして、もし病気になってしまったときは、小さなことでも良いので目標をもってみてください。どんなに末期だとしても、病気に負けない気持ち、諦めない気持ちを持ち続けることが大切なのだと思います。


左目眼球と頸リンパ管を摘出した大川さん。


静岡がんセンターで出逢ったエピテーゼ治療。「社会生活を送るのなら取り入れたい」と、装着を見越した手術法を選択しました。この小さなエピテーゼからは、前向きに自分らしく生きたいという彼女の意志が伝わってきます。

編集部ピックアップ!
知ってほしい医療の現状

【※1】セカンドオピニオンを賢く使う

最近日本でもよく耳にするようになってきました。「セカンドオピニオン」とは、主治医以外の医師に治療方針について意見を求めることです。アメリカではセカンドにとどまらず、サード、フォースオピニオンがすでに当たり前となっています。日本人の悪い癖で「主治医以外に意見を聞くなんて申し訳ない」と誤った考えを持ちがちですが、多角的な意見を聞き十分納得した上で最善の治療法を選択することはとても重要なことです。腕に自信のある医師ほどセカンドオピニオンには好意的でもあります。セカンドオピニオンをするにあたり、患者側は検査結果などの資料を請求する権利があり、医療機関側は請求に応じる義務があります。必要と感じた際は遠慮なくセカンドオピニオンを申し出ましょう。不必要な受診を繰り返し、医療機関を次々と渡り歩く「ドクターショッピング」とは異なります。

【※2】片目を失っても障害者手帳は受給できない!?

今回インタビューに応じてくださった大川さんは、片目を失ったにも関わらず身体障害者手帳が認められませんでした。それ故、一般枠での再就職では大変な苦労をされたともお話してくださいました。本来、身体障害のある方の自立や社会活動の参加を促し支援する目的として作られた身体障害手帳ですが、そこには本当に必要な人のところに届けられていないという歯がゆい現実がありました。一見すると体に不自由があるとは思われない人でも、大病の後遺症で苦しまれている方は大勢います。病後の人生も自分らしい生き方ができるように、国・自治体・企業といったあらゆる組織がバックアップしていく社会になることを願っています。

投稿日:2017年12月26日 | カテゴリー:読みもの