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巻頭特集

「肝臓がん」原因・治療の現在

日本国内で毎年約3万人が亡くなっている肝臓がん。「高山術式」を生み出し、肝臓がん治療の世界的権威として最前線に立ち続ける高山忠利先生に、原因と治療についてお話を伺いました。(2016年夏号掲載)

高山忠利先生

日本大学医学部附属板橋病院 消化器外科教授 高山 忠利(たかやま ただとし)先生
日本大学医学部卒業、同大学院外科学修了。国立がんセンター中央病院外科医長、東京大学医学部肝胆膵移植外科助教授を経て現職に至る。日本外科学会専門医・指導医・評議員、日本消化器外科学会専門医・指導医・評議員、日本肝胆膵外科学会高度技能指導医・評議員。日本肝臓学会織田賞、東京都医師会賞などを受賞。

◎肝臓の病気といえば「お酒の飲み過ぎ」というイメージがありますが、肝臓がんは?

高山先生:ひと昔前は、肝臓がんの原因の多くがアルコールだと言われていたため、お酒=肝臓がんというイメージがまだ残っていますね。健診結果などで肝機能の数値を見て一喜一憂している人も多いと思いますが、日本ではアルコールが肝臓がんの原因になる場合は3%と少なく、約60%がC型肝炎、約15%がB型肝炎によるものです。

アルコールが原因の肝臓がんが多いのは、欧米。お酒が飲める遺伝子を持つ人が多く、若い頃から大量に飲むからと言われています。とは言え、日本人でもアルコールや生活習慣が肝臓がんの原因になったり「アルコール性肝障害」を起こす可能性もあるので気をつけましょう。

肝臓は「沈黙の臓器」と言われるように自覚症状が出にくいため、健診結果のγ−GTPなどの数値で自分の肝臓の状態を知り、いたわりながらお酒を楽しんでいただきたいですね。週に2回は飲まない日を設けることが理想です。

◎B型・C型肝炎の検査は、必ず受けた方が良いのでしょうか?

高山先生:肝炎ウイルスの検査(血液検査)を受けたことがない人は、必ず受けて下さい。一般的な健診には含まれないことが多いので、自主的に受ける必要があります。特に注意が必要なのは、C型肝炎ウイルスが発見された1989年以前に手術などで輸血を受けた人です。

肝炎ウィルス検査で陽性だった人は医療機関に相談し、すぐに治療を開始しましょう。現在は効果的な新薬でウイルスを除去したり、肝庇護療法で肝臓がんになるリスクを減らすことができます。治療が終わってからも、年に1回は超音波検査を受けた方が良いですね。

◎肝臓がんの治療について教えてください。

高山先生:30年位前は、肝臓がんと診断されたら余命半年といわれ、手術による5年生存率は約20%程度でしたが、現在は約60%と大きく上がりました。この背景には手術の飛躍的な進歩と、ラジオ波焼灼療法・肝動脈塞栓療法などの登場があります。治療の進歩には日本の医師が大きく貢献していることからも、治療技術は世界でもトップレベルと言えるでしょう。

治療法は、がんの個数・大きさ・肝機能の状態によって決まりますが、他のがんと同様、早めに見つかれば選択肢が広がりますので、早期発見を目指していただきたいですね。私たちも常にベストな治療方法を提供しながら、さらに優れた治療を目指し、可能性を広げていきたいと考えています。

“細心と革新”で不可能を可能に!
高山術式

血管が複雑に密集している肝臓は、一歩間違えば大出血が起こりやすい場所です。中でも「尾状葉」と呼ばれる部分は表面から見えない奥深くにあり、がんができた場合に昔は手術が不可能とされてきました。

1994年、高山先生はこの「尾状葉」のがん切除に世界で初めて成功。「高山術式」が誕生し、肝臓がんの治療に大きな光をあてました。現在は年間300件以上の手術を担当し、肝臓外科医のトップとして活躍。全国から患者が集まり、多くの命を救っています。

“細心と革新”をモットーに、難しい手術を成功に導いてきた高山先生の手術は、神経質なほど細やかで丁寧。苦労をいとわずに安全で確実な方法をとるため、平均出血量は一般的な肝臓手術の3分の1程度です。輸血の必要がほとんどなく、術後の患者の負担が軽減し、結果的に回復が圧倒的に早くなるのが大きな特徴です。

高山忠利先生
手術による5年生存率は全国平均で57%、高山先生が在籍する日大附属板橋病院では64%です。

高山忠利先生
30年間続けている手術の緻密な記録。こうした積み重ねが、高山術式の誕生にもつながっています。


投稿日:2016年9月28日 | カテゴリー:読みもの