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巻頭特集

「肺がん」早期発見の心得

技術の進化により「がん」は治る病気になってきています。大切なのは“早期発見と適切な治療”。肺がん治療の名医である呉屋朝幸先生に、早期発見の心得についてお話を伺いました。(2014年秋号掲載)

呉屋朝幸先生

杏林大学医学部外科 名誉教授/善仁会小山記念病院顧問 呉屋 朝幸(ごや ともゆき)先生
鹿児島大学医学部を卒業後、東京大学医科学研究所付属病院外科、三井記念病院外科、国立がんセンター外科、同外科医長、杏林大学医学部外科教授・同付属病院副院長を経て現職に至る。肺癌学会副理事長、日本外科学会外科専門医・指導医、日本呼吸器外科学会専門医・指導医、日本がん治療認定医療機構暫定教育医。

◎国内で患者数が一番多い肺がんですが、まずはどういった症状が出るのでしょうか。

呉屋先生:肺がんは、気がついた時には進行してしまっているケースが少なくありません。肺がんのタイプによって、症状が全くない場合もありますし、症状がある場合も咳・痰・発熱などの風邪とよく似た症状であるため、軽く考えられがちだからです。

風邪の症状、特に咳や痰などが一週間以上長引く時は、呼吸器科の専門医に相談しましょう。「普段痛くないところが痛い」「何だかいつもと調子が違う」という場合も要注意。ご自分の身体の異変にデリケートでいることは、とても大切です。

初期症状が全くない場合もありますので、一定の年齢に達したら定期的に検査を受けることをおすすめします。

◎いつ頃から定期検査を受け始めれば良いのでしょうか。

呉屋先生:どのがんに対しても同様に言えることですが、症状が特になくても、50歳を過ぎたらすべての方に検査を受けていただきたいですね。異状がなくても「何もない」という検査結果を保存しておきましょう。その後の検査で「影」が見えるなどの変化があった時、比較対象として役に立つからです。

検査を受ける間隔の目安ですが、リスクの上がり始める50代は5年に1度、60代は3年に1度、肺がんが一番多い70代は2年に1度というように頻度を上げましょう。医療機関と相談しながら、ご自分の検診プランを立てられると良いですね。

◎肺がんの検査と治療の内容について、教えてください。

呉屋先生:肺がんの検査はレントゲンが一般的ですが、50歳を過ぎたらCT検査を追加することが有効です。特にヘリカルCT検査は、ほんの数秒程度息を止めるだけで肺全体をらせん状に撮影できる優れた方法で、日本はこの検査の普及によって「あるかないかわからないくらいの、小さながんを見つける」ことが可能になり、欧米と比べて早期発見率が伸びています。

治療は手術・放射線治療・抗がん剤治療の3本柱で、肺がんの種類・部位・身体の状態・ステージで決定します。近年の医療の進歩によって、早期であれば治療の効果も飛躍的に上がっています。

◎早期発見で治る確率は、どのくらいあるのでしょうか。

呉屋先生:2センチ以下(ステージ1以下)の小さながんであれば、8割以上の方が治ります。発見が早ければ早いほど治療の選択肢がひろがり、その成果も高くなります。

気になる症状があっても、忙しさやがん告知への恐れから、理由をつけて検査を先のばしにする方が多くいらっしゃるのが現状です。早期に発見して適切な治療を受けるためにも、ぜひ定期的に検査を受けていただきたいですね。

投稿日:2016年6月7日 | カテゴリー:読みもの