「肺がん」最新治療と患者力
技術の進化により「がん」は治る病気になってきています。大切なのは“早期発見と適切な治療”。肺がん治療の名医である呉屋朝幸先生に、最新治療についてお話を伺いました。(2015年春号掲載)
杏林大学医学部外科 名誉教授/善仁会小山記念病院顧問 呉屋 朝幸(ごや ともゆき)先生
鹿児島大学医学部を卒業後、東京大学医科学研究所付属病院外科、三井記念病院外科、国立がんセンター外科、同外科医長、杏林大学医学部外科教授・同付属病 院副院長を経て現職に至る。肺癌学会副理事長、日本外科学会外科専門医・指導医、日本呼吸器外科学会専門医・指導医、日本がん治療認定医療機構暫定教育 医。
◎実際に肺がんが見つかった場合、どのような治療法があるのでしょうか?
呉屋先生:肺がん治療には大別して「がんを切除する外科手術」「抗がん剤を主とした化学療法」「放射線を病巣に照射する放射線療法」などがあります。近年のがん治療の進歩はめざましく、身体への負担を抑えた治療や、がん細胞に的を絞って作用する治療が可能になってきています。肺がんも早期であれば治る可能性が高く、進行している場合でも適切な治療を受けることで、かなり抑えることができるようになりました。
◎外科手術、化学療法、放射線療法、それぞれの内容を簡単に教えていただけますか?
呉屋先生:手術で多く行われているのは、肋骨の間からカメラを挿入して画像をモニターで確認しながら行う胸腔鏡下手術です。肺がん自体が大きい場合や周囲に食い込んで いる場合は開胸手術が必要になりますが、胸腔鏡下手術は切開が10センチ以下と小さいため、体力のない方でも身体への負担が少ない、術後の回復が早いなどのメリットがあります。手術は呼吸器外科専門医のいる施設で受けることが望ましいでしょう。
抗がん剤も飛躍的に進歩していますね。増殖するがん細胞にだけ作用する分子標的薬の開発が進んでおり、今後さらに期待されています。投薬前に自分のがんに対する分子標的薬剤の有効性を調べる遺伝子検査が必要ですが、副作用をより一層抑えることができます。
放射線療法においても、病巣の形状や深さにあわせて放射線をピンポイントに照射する(定位放射線治療)、精度の高い治療(IMRTなど)が可能になりました。先進医療として、陽子線や重粒子線を使った治療も注目されていますね。
◎治療法はどのようにして決まるのでしょうか?
呉屋先生:肺がんの種類・部位・身体の状態・ステージ(進行度)によって最適な治療の組み合わせは異なります。患者さんの意志も尊重しながら総合的に決めていきますので、医師から納得がいくまで説明を聞いて判断しましょう。
肺がんは自覚症状が全くないか、ある場合も風邪に似た症状で軽く考えられがちですが、発見が早ければ早いほど治療の選択肢がひろが り、その治療成績も高くなります。50代を迎えたら「自分はリスクゾーンに入った」と自覚し、定期的に検査を受けていただきたいですね。ご自身の身体のちょっとした変化に敏感でいること、患者力を高めることが大切だと思います。